企業の多くは、仲裁契約(mandatory arbitration agreement)を従業員と締結している。この手の契約には、集団訴訟権を放棄する項目が含まれていることが多い。これはつまり、雇用上紛争の解決手段として『訴訟(裁判所を使用して雇用者を訴えること)』を放棄することのみならず、全てのクレームは、個人で、仲裁を通して提起しなければならないことを意味する。
先日、NLRB(全国労働関係局)が裁いた『Hobby Lobby Stores, Inc.事件』で、同局行政法判事(NLRB本体より一段階下の現場判定官)により、こうした契約上の集団訴訟権放棄は、社員同士の『相互扶助』と『利益』のために行う『社員同士の行動(Protected Concerted Activity)』を保護するNLRA(全国労働関係法)に違反している、という裁定が再度下された。
今回の行政法判事の裁定はNLRB本体が過去に下した裁定よりも更に従業員側に偏ったものになっている。まず、連邦仲裁法(Federal Arbitration Act = 連邦裁判所の多くが、仲裁契約の合法性の根拠として頻繁に挙げる法令)は仲裁契約書には適用しないと宣言した。その理由として、この手の契約書を締結する行為は、連邦仲裁法適用の大前提となる『通商・交易を影響する行為』ではないとした。(注:連邦仲裁法は「通商・交易に影響を及ぼす行為」にのみ適用される法令である。)
そして、雇用者にとって更に重要な点として、Hobby Lobbyに対し、(1) 過去に仲裁契約を利用し、それらが有効であるという判決を下した各連邦地方裁判所に対して、それら仲裁契約の利用廃止、また改正されるべき非合法契約であることを通知するよう提案し、(2) 原告に弁護士費用、及び訴訟費用を支払うよう命令を下した。
行政法判事のこの強硬な裁定は、今後NLRB本体により審議され、その後連邦控訴裁判所に上がって行く事はほぼ間違いない。現時点では、合衆国全ての連邦控訴裁判所は、NLRBが当案件に付き提示している方針を却下・否定している。弊所では、今後もこの重要なケース、そして行政による法令見解の続報を追いたい。