米国国務省および米国領事館に関する最新情報をお届けします。
COVID-19パンデミック後の領事業務状況について
COVID-19の世界的な流行により、世界中の米国領事館での通常のビザ手続きは事実上閉鎖されました。多くの領事は家族とともに米国に帰国しました。世界的な渡航制限と各国の公共の場での制限により、領事は法律上ビザ処理に必要な申請者との面接を抑制されました。米国領事は遠隔勤務を続けましたが、法律上の要件や業務の機密性ゆえに、オンライン業務の権限は限定的でした。
財務的な観点から見ると、領事業務の収入の大部分は、ビザ申請者が支払う利用料です。申請者がいない状況で収入は半減し、2020年と2021年には多くの領事職が補充されないままとなりました。さらに、パンデミックの前に、多くのキャリア・オフィサーが退職または辞職しています。このようなパンデミックによる制約、雇用や業務のための収入減、そして領事職の減少が相まって、ビザ手続きは停止、あるいは著しく遅滞することになったのです。
非移民ビザの手続き
2021年12月、国務長官と国土安全保障省は、領事に対し、業務遅滞に対応するための処理手順の変更を許可しました。
- 2022年末までの特定非移民ビザ申請者の対面面接要件の免除は、処理件数の多い領事ポストでのビザ処理の業務遅滞を減らす効果的な手段となっています。この権限により、領事は、以前に何らかのビザを発行され、その後基本的にはビザを拒否されたことがなく、明らかな不適格または潜在的不適格がない個人の申請ベースのH-1、H-3、H-4、L、O、P、Q申請者のビザ面接要件を免除する裁量権を付与されました。ビザ免除プログラム(ESTAクリアランスを持つVWP)に参加している国の国民または市民であり、明らかに不適格または潜在的不適格がなく、電子渡航認証システム(ESTA)経由で取得した認証を使って以前に米国に渡航したことがある方が初めてH-1, H-3, H-4, L, O, P, Q の個人申請する場合も同様です。
- 米国大使館・領事館の96%が再び業務を開始し、ビザ申請者の面接を行っています。
- 国務省によると、全世界の全ビザカテゴリーにおける領事館の非移民ビザ発行の現在の統計は、2021年9月の29万312件に対し、2022年9月は71万8175件となっています。
- 非移民ビザ申請手続きは、新型コロナウィルス流行前の月平均の94%、移民ビザ申請は130%に達しています。
- 過去12カ月間(2022年9月30日現在)で、国務省領事局は800万件の非移民ビザを処理し、政府はベストケース予測を大きく上回っていると発表しています。
国務省は、非移民ビザ処理の優先順位をカテゴリー別に設定しています。しかし、現在では、裁量権を行使して、面接免除の対象となるカテゴリーの範囲を広げ、非移民申請者の処理を増やし、業務遅滞を短縮するための手続き上の工夫をしています。これらの変更は以下の通りです。
- Third Country National (TCN Processing) - Third Country National Processingとは、外国人が自国以外の米国領事館でビザを申請することです。ワシントンD.C.の国務省ビザ局では、領事業務の負担をより速い領事ポストにシフトすることを強く推奨しています。規則では、外国人は世界中のどの米国領事館にも出頭することができます。自国での手続きは必要ありません。唯一のリスクは、ビザが却下された場合、直接米国に再入国することができず、自国の米国領事館で再申請しなければならないことです。したがって、外国人は、自国の米国領事館でのビザ手続きの待ち時間が滞っている場合、このオプションを積極的に検討する必要があります。
- 面接免除の対象となるカテゴリーの追加 - DHSの大統領令から除外されたビザカテゴリーについては、領事館の裁量で面接免除を受けることができます。これには、前回の申請と同じ内容で更新を申請するEビザ申請者も含まれます。この政策変更は、カナダのトロント米国領事館で実施されており、他の領事館でも同様に実施することが奨励されています。これにより、イタリアのローマのような、審査が14カ月も保留されていた領事館の業務遅滞を軽減することができます。
- 更新のための米国内ビザ手続き - これは国務省の規則で認められている方法ですが、2000年代初頭に生体認証がセキュリティ・クリアランスの要件となったため、何年も前に中止されました。外国人は、同じカテゴリーのビザスタンプの更新を国務省に直接申請することになります。更新のために海外の米国領事館に申請する手続きや費用が不要になり、領事部門の業務負担が軽減されます。国務省はこのプロセスの復活をためらっているものの、真剣に検討中だとしています。ビジネス・コミュニティから多くの支持が得られれば、この問題に関して前向きな結果がもたらされるかもしれません。
計画を立てる際に便利なのが、国務省のビザ予約待ち時間システムです。
NVCによる移民ビザ(グリーンカード)手続きについて
- 2022年10月31日現在、ニューハンプシャー州にある国務省のナショナルビザセンター(NVC)の移民ビザケース(グリーンカードケース)の業務遅滞数は42万3367件で、非常に多くなっています。NVCは、海外の400以上の米国領事館で直接面接し、審査するためのケースを処理しています。これらのケースは、書類上、面接の準備が整っているにもかかわらず、領事館の人員不足、または現地の国の規制により、面接の件数を増やすことができないため、保留されているのです。
- これらの遅滞を迅速に処理する努力にもかかわらず、裁決プロセスは非常に遅く、2023年後半まで続くと予想されます。例えば、2022年9月の移民ビザの総発行数は、COVID-19パンデミック時の2020年9月の14,894に比べ、57,186に達しています。これは非常に大きな増加ですが、現在の発行数をパンデミック前の10万人を大きく超えるレベルに持っていくためには、より多くのリソースとアクセス性が必要です。
- 遅滞の解消とコミュニケーション努力をさらに強化するためとして、2020年6月1日、NVCは郵送による問い合わせの受付と回答を停止しました。NVCとコミュニケーションをとるための最良の手段は、オンラインの「一般向けお問い合わせフォーム」ですが、これはレスポンスが遅く、しばしば不正確な回答がなされることがあります。
- 2022年5月23日、NVCは重大な遅滞に対処するためとして、電話での問い合わせサービスを停止し、移民/グリーンカードの手続き関係者にさらなる衝撃が走りました。
まとめると、米国大使館と領事館の業務は、パンデミック以前のビザ処理水準に真摯に、しかしゆっくりと戻りつつあるということです。しかしながら、フル稼働させるためには、より多くのリソースとアクセス性が必要です。外国人が海外でビザを申請する場合、渡航のかなり前に計画を立て、領事ビザサービスシステムでビザの取得状況を確認することが重要です。代替案が必要であり、柔軟性が求められます。2023年末までには、米国務省領事局の業務が完全に人員配置され、運用されることを願っています。
この世界的な危機から学んだことは、ビザ手続きの政府機関であれ、重要なサプライチェーンの民間企業であれ、完全な業務能力を維持するには、リスク管理、バックアップシステム、インフラ支援が不可欠であるということです。